40085ギネス級のボトル数 伝説の老舗バー「ねも」(東京都・浅草)|こだわりの空間で酔いしれる 一度は訪れたいウイスキーの名店

ギネス級のボトル数 伝説の老舗バー「ねも」(東京都・浅草)|こだわりの空間で酔いしれる 一度は訪れたいウイスキーの名店

編集部
下町情緒が残る浅草は知る人ぞ知る、人気バーの激戦区。古くからの老舗バーが集まる街で、伝説のバーといわれているのが「ねも」だ。ウイスキーの技術で60年続いている店として知られている。

バックバーと博物館に約8万本以上を所有

六区近くにある店に初めて訪れた客は、一直線に伸びる長大なカウンターとバックバーの大きさに目を見張るだろう。そしてバックバーに隙間なく並べられたボトルの本数に圧倒されるはずだ。

グレンファークラスのオリジナルウイスキ―「NEMO」と根本寛さん。ウイスキー愛は深い。

「ここだけで約3千本あります。1本のボトルから棚の高さ、奥行きまで考えてボトルが収まるように設計。常に約20度で管理しています」とオーナーバーテンダーの根本寛さんが微笑む。しかし、驚くのはまだ早い。スコッチウイスキーだけで8,400種類以上。ナンバー1のボトルも200種類。全部で8万本以上の洋酒を保有しているという。

大多数のボトルは、根本さんが作った「洋酒博物館」に保管している。博物館といってもコレクションではなく、あくまでもお客様に飲んでいただくためのものだ。「ギネス級」と賞賛される膨大な洋酒を目当てに、国内外からウイスキーの愛好家や専門家が多く訪れている。

バックバーで静かに出番を待つウイスキーボトルの数々。一番上の棚のボトルは1杯1万円以上だ。

創業は昭和35年(1960)に父の根本元吉さんが初代のバーを開店したのが始まり。元吉さんはバー業界で「神様」と呼ばれる伝説的なバーテンダーで、日本バーテンダー協会の技術研究部長として人材育成のカリキュラムを作り、約40年にわたって多くのバーテンダーを育ててきた。かつて田中角栄氏や、デン助こと大宮敏充さんをはじめとする浅草芸人たちも通っていた。

店の奥の壁には店名「Nemo」のロゴがスタイリッシュに飾られている。

二代目の寛さんは父の後を追って30年前にバーテンダーに。そして25年前に父の店の隣に現在の自分のバーを開店させた。

「当時はバーボンがブームでした。でも、バーボンの大元はどこから来たかを考えると、やはりスコッチなんです。私はその頃からスコッチウイスキーが大好きでした」

コースターにはバーテンダーの似顔絵が描かれている。
オーナーの根元寛さんによるオリジナルウイスキーが樽詰めに。

スコットランドに通い、スコッチウイスキーの名門「グレンファークラス」と出会う。ピートを一切焚かないノンピートモルトを使い、ガスによる直火炊きの銅製ポットスチルで蒸留、シェリー樽で熟成させる。独特の造り方のよる味わい深いウイスキーで人気のスコッチだ。寛さんはこの蒸留所で約20年前に公認テイスターの資格を取得。自らウイスキーのテイスティングと選定ができるバーテンダーとなった。オリジナルブランドの「NEMO」のほか、店内にある樽の3種類のオリジナルウイスキーを飲むことができる。

寛さんお勧めのウイスキー。(右から)マッカラン1946年、Nemo40年、バルベニ1937年、G&Mグレンリベット1940年・50年、マッカラン50年ゴールデンジュビリー(50本中の1本)、スプリングバンク1966年ウエストハイランド、NEMO50年。

「ウイスキーは香りです。バックテイスト、飲んでから感じる風味ですね。僕の好みはシェリー樽で熟成させたウイスキー、ピート香の多いもの。これこそがスコッチです」

ウイスキーをテイスティングする根本寛さん。

ギネス級のボトルが揃ったバーでは、色々な愉しみ方ができる。例えば飲み比べ。いわゆるウイスキーの飲み比べは30年ほど前に、隣の本店で行ったのが始まりで、その後に他店も真似をするようになったとか。ヴィンテージや樽などで飲み比べできるウイスキーは質量共に他店とは比較にならないくらい多い。ただし、と寛さんは言う。

「ウイスキーをたくさん揃えるだけでなく、バーテンダーの仕事が大切です。技術で味をひらかせて、そのウイスキーが一番美味しく味わえるように客様に提供する。バーテンダーの腕があってこそのお酒です」

「NEMO」40年物。
お勧めカクテルの「アイリッシュローズ」。

また、思い出の「懐かしい味」を探しに来る客も訪れる。その昔外国に行った時に飲んだ銘柄をもう一度飲んでみたいというウイスキーファンがこの店にやってくる。

「懐かしい味に出会える。それが可能な唯一のバーです」と寛さん。

(右より)グレンファークラス60年、ダルモア2本(オンリーワンボトル)、世界最古のシングルモルト・グレンフィディック64年など。

世界でここだけにしかない希少なウイスキーも多く、世界で一番高いという「マッカラン60年」1億2千万円(現在)も所有する。本場の蒸溜所とは家族ぐるみの付き合い、ギネス級コレクションをリスペクトされる寛さんだからこそ、多くのウイスキーがこの博物館に集まってくるのだろう。一度は訪れて、ゆっくりとウイスキーと向き合い、その深淵さを味わいたい。そう思わせてくれるバーである。

マッカラン60年(1926年)。
「オールドパー(オールドボトル)」も揃う。
グレンファークラス60年を飲むために常連客は積み立て貯金。
ジョニーウォーカー2百周年記念。
棚にも貴重な酒が所狭しと並んでいる。
コロナによりマスク姿、ソーシャルディスタンスに配慮しながら営業している。
オーナーバーテンダーの根本寛さんを中心に、チーフバーテンダーの三倉謙一さん(右)と石塚篤さん(左)。

【Recommended whisky】グレンファークラス

開店55周年記念に根本寛さんがテイスティングした、グレンファークラス21年。シェリー樽の香りが強く、余韻が長く味わえる。スタンダードよりもコスパが良い。3,500円。

文◎阿部文枝 撮影◎遠藤 純

ねも

浅草の喧騒から離れて、ひっそりと佇む「ねも」。

※店の営業時間が変更になることがありますので、来店時には店舗にご確認ください。

編集部
編集部

いくつになっても、男は心に 隠れ家を持っている。

我々は、あらゆるテーマから、徹底的に「隠れ家」というストーリーを求めていきます。

Back number

バックナンバー
More
もっと見る