共鳴と間合いを大切に 「古教会」と歩み続ける

店に足を踏み入れた途端、荘厳なバッハの音色に包まれる。1890年代のイギリスの家具、古民家の梁、一輪挿しの白い花、それらが見事に融合している「バー ラ・ユロット」。

ここは古い教会をイメージして造られたバーだ。オーナーバーテンダーの川瀬彰由氏が修業時代、ヨーロッパ旅行の途中に廃教会に迷い込んだのがきっかけでこのコンセプトになった。
「中に入ってすぐ、店を持つ時は絶対このデザインだと直感しました」。
32歳で店を持つことになり、理想の店を造り上げた。しかし、「自分の内面が店に釣り合わず、最初の3年は店に踊らされていました」。それでも客の思いに応え続けることを信条に、店に立ち続けた。

「お客様ごとに接客の間合いを変えたりできるようになりました。そういう進歩のおかげか、10年以上経った今は、店は相棒のような存在です」と穏やかに微笑み、今宵も静かな教会に訪れる客を待つ。
写真/遠藤 純