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食材からメニューまで北海道にこだわる老舗居酒屋
日本列島を形成する主要4島の中で本州に次ぐ2番目の大きさを誇り、地方自治体の中で唯一の「道」である北海道。日本の一番北端に位置する北海道は、もともと先住民アイヌ民族が暮らす島だったが、15世紀半ばのコシャマインの戦いを機に日本領土になったという歴史がある。
人口は全国8位のおよそ550万人と多いが、広大な面積ゆえに人口密度は日本で最も低い。そして、その広さと北国ならではの気候を有効活用した農業や酪農、さらに四方を取り囲む海からの恩恵を存分に受けた水産業が非常に盛んである。
そんな北海道の食材を使った郷土料理が東京で食べられるのは、高齢者に人気の街・巣鴨の「アラキ」だ。

店主の荒木英二さんがこの場所に店を構えたのは、昭和47年(1972)10月のこと。日本で一番小さな市として知られる北海道歌志内(うたしない)市出身の荒木さんは、大学進学で上京し、卒業後に世界中を旅するための資金を稼ぐために居酒屋を始めたという。
そして「せっかく居酒屋をやるのならば、自分が生まれ育った北海道の本物の味をお客さんに味わってほしい」と、開店当初からメニューや食材を北海道にこだわってきた。
カウンターや座敷側の壁にズラリと貼られたメニュー短冊には、数えきれないほどの北海道料理の名が書かれ、お客さんから注文が入ると荒木さんと奥さまの朱美さんが手際よく調理していく。

食材は北海道に住む荒木さんの親戚から毎日空輸される新鮮な魚介や野菜などを使用。なんと食材の空輸は開店時から47年間、ずっと続けているそうだ。
「北海道の味を提供するのなら、やっぱり北海道の本物の食材を使うのが筋ってもんだろう。おかげで北海道出身のお客さんには、地元の味だって喜ばれているよ」

店内では常連客の楽しい会話と笑い声が絶えない。東京の居酒屋メニューでもおなじみの「ホッケ焼き」は北海道が本場。現地直送のホッケの開きは、地元で食べるのと同じ鮮度と味が好評だ。じっくりと炙られ、程よく脂がのった逸品は、それだけで酒によく合う。
酒は北海道の名酒「男山」をはじめ、純米生酒「北の誉」や、しそ焼酎「鍛高譚(たんたかたん)」など、北海道の酒が常連さんたちに人気だ。もちろん、ビールはサッポロである。


東京のほかの店では滅多にお目にかかれない珍しいメニュー「氷頭なます」は、サケ頭部の鼻先にある軟骨を使った酢の物だ。サケが獲れる北海道ならではの伝統料理で、まるで氷のように透き通っていることからこの名前がついたという。そのコリコリとした食感は子供から大人まで人気で、北海道の食卓には欠かせない料理という。
アラキではほかにも、丁寧に皮をむいて輪切りにしたジャガイモを、直火でじっくりと焼き上げた「じゃがいもバター」や、現地から空輸された新鮮なホタテを、シンプルにバターで焼いた定番の「帆立貝バター焼」など、思わずヨダレが垂れそうなメニューであふれている。

また、荒木さんが特に郷土を思い出す味としてお勧めするのは「にしん漬け」だ。北海道の人にとって、にしん漬けは魚料理ではなく、お新香だという。昔は10月頃になると、どこの家庭でも庭先に大根を干して、長く厳しい冬の間の保存食としてにしん漬け作りを始めていたのだそう。
キャベツと大根、身欠きニシンを米麹で発酵させたにしん漬けは、長期間漬け込むほどに旨みが増す。東京で本物のにしん漬けを食べるなら、言うまでもなくアラキの味がおすすめだ。

最後に贅沢なシメの料理として頼んだのは「イクラ茶碗」。新鮮なイクラがたっぷりのった北海道らしいご飯だ。アラキで使うイクラはサケが川に戻る前に海で取り出したものだという。川に戻ってからのものに比べ、海のイクラは粒が柔らかいのが特徴である。プチプチと口の中で弾け、じわりと滲み出るイクラの旨みは筆舌に尽くし難い。
開店からまもなく50年。旅には結局行けずじまい。だがその代わりに、来店する多くの人々との出会いを経験してきた荒木さんは、今日も北海道の味を提供すべくカウンターに立つ。

※営業時間・定休日などに変更の可能性あり(2017年取材)
文/大田ヒロ 写真/井野友樹
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