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魚の旨みを引き出す富山料理・昆布じめの専門店
富山県は日本海に面し、北アルプスや飛騨山脈などの峰々に囲まれ、タイやブリなどの海産物が豊富に獲れる。江戸時代、北前船によって北海道から昆布がもたらされて以来、現代に至るまで昆布消費量は全国で一、二を争うほど、富山県では日々の食生活に昆布が用いられている。
「富山は人が少ないけれど、空気がきれいで魚が美味しいのが魅力ですね」と話すのは「昆布とり」の店主・宇於崎洋志さん。
富山県高岡市出身の両親のもと、神奈川県で生まれ育つ。食卓には母が作る昆布じめをはじめ、富山の料理がいつも並んでいたという。また、宇於崎さんは学生時代にレストランで調理のアルバイトをするほど料理好きだった。

店を始めたのは平成17年(2005)。母がよく作ってくれた昆布じめの味を思い出し「昆布じめの専門店がないから自分でやってみよう!」と思い立ったのがきっかけだという。
店で出される魚は全て富山湾・氷見から直送で届く旬のもの。これまで富山の漁師とは直接のつながりを持っていなかったが、祖父の友人の網元から直接仕入れるようになった。
まずは看板メニューの「昆布じめ」を注文する。1日以上、昆布で〆たものだけを提供すると語るほど、格別のこだわりを持つ。アカイカの昆布じめを箸で持ち上げると糸を引いている。「それは刺身に昆布の旨みが染み込んでいるんですよ」と宇於崎さん。

口に運べばモチモチとしたイカの弾力に驚き、鼻に抜けるような昆布の香りに心を奪われた。絶品の酒肴には日本酒が欲しくなるというもの。富山県産の地酒を取り揃えており、宇於崎さんお勧めの「勝駒」をいただく。始めは落ち着いた甘さ、次に酸味と辛さがじんわりとあふれ出てくる味わい。
素材の味を生かした味わい深い昆布じめと、芳醇な香りが漂う名酒。わずか2品の注文で富山の味に心酔してしまった。


20時ともなれば全10席のカウンターは客で埋まる。宇於崎さん曰く「うちはホームページとか詳しくないのであまり告知してませんが、自然と富山県出身のお客さんがよくいらっしゃいます」。言葉通り、この日は近所に住む富山出身の常連客と、これから仕事で富山へ行く予定という男性も来店した。
数十分も経たぬうちに見ず知らずの客同士でも「富山」、そして「昆布とり」というつながりだけで、いつの間にか和気藹々とした雰囲気になる。懐かしい郷土の味はもちろん、ゆっくりと流れる時間がこの店の魅力なのだろう。
富山の郷土料理にはサクラマスを発酵させずに酢で味付けした「ます寿司」がある。宇於崎さんは「富山でます寿司を作っている店はいくつかあり、各家庭でその店の味に慣れ親しんでいるので、ご要望があればいつも取り寄せています」と話す。客の目線に立った柔軟な姿勢が、自然と店全体の穏やかで居心地の良い雰囲気をつくり出しているいるのかも知れない。


富山県氷見で加工・調理された日本海産のアジは、空気がきれいな氷見だからこそ魚本来の味を引き出せる。「小アジのみりん干し」は開きが8枚連なり、手でちぎりながら食べる。噛むほどに滲み出てくる甘辛い味に酒が進む。
「いか黒づくり」は細切りにしたスルメイカの身をイカスミ、肝臓と混ぜ合わせて熟成させた塩辛で、富山を代表する珍味。江戸時代にはすでに存在し、加賀藩主が将軍に献上したという記録も残っている。イカスミには旨み成分のグルタミン酸が含まれ、栄養価も高い。塩辛ながら、まろやかな味わいが酒の肴に最適だ。

また昆布を使った代表的な料理といえば「富山かまぼこ」もそのひとつ。板状にのばした魚のすり身を伊達巻のように巻いて蒸す。手前のかまぼこは昆布が、奥は着色された薄いすり身がそれぞれ巻かれていて、バリエーションも豊か。

富山県民のおふくろの味と言える「とろろ昆布おにぎり」は、シメのひと皿に人気のメニュー。宇於崎さんが子供の頃から慣れ親しんだ母の味を提供している。ふわふわのとろろ昆布から、ほのかに漂う磯の香りが食欲をそそり、程よい酸味のゆかりが混ぜられたご飯と超妙にマッチする。
宇於崎さんは夫婦で店を切り盛りし、年に数回は2人で富山へ行く。稚アユなど鮮度の都合で、東京での提供が難しい料理が富山には多いという。そんな中でも東京で提供できると思うものを厳選しているのが「昆布とり」には見て取れる。
「これからも変わらず富山の郷土料理や地酒と共に、初対面の人同士でも楽しく過ごせる、温かみのある店を続けていきたいですね」
店主の人柄がそのまま表れたかのような店、そして郷土を彷彿とさせる懐かしい料理の数々に、富山県出身者が足繁く通うのも頷けるのである。

※新型コロナウイルス感染症対策のため営業時間・定休日に変更の可能性あり(2017年取材)
写真/遠藤純
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