
カウンター内には湯温が60度と80度の2種類の湯燗器を用意。二つを使い分けて燗をつける。例えば、火入れした酒は60度でじっくりとお燗する。通常は燗にしない生酒は80度へ。
「生酒は中途半端に燗にすると生臭くなります。80度に入れて一気に温度を上げると、嫌な匂いや苦みが消えて美味しくなります」

さらなる魔術師の極意が「デキャンタする」ことだ。チロリで熱くした酒を徳利に移し替える際に、何度も空気に触れさせて酒を柔らかくする。10年、20年寝かせた熟成酒は何度もデキャンタすることで、強い熟成香が消えて、とげがなく優しい味わいになるという。


「世界のアルコールの中で温度によって違う愉しみ方があるのは日本酒だけ。5度刻みで名前があり、お燗番という仕事がある。人間の舌は冷酒よりも温かい酒の方が甘味や旨味を感じます」

燗酒と共に味わう酒肴は、肉料理をメインに提供している。日本酒は燗酒にすることで、脂っこい料理や濃い味付けの料理にも相性が良くなる。出身地の岐阜から届く肉やジビエを肴に、魔術師のつける熱燗に酔いしれたい。



文◎阿部文枝 撮影◎遠藤 純
えんじゃく、

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