「うちの日本酒は99%燗酒で味わってもらえる品揃えです」

少しいびつなコの字形のカウンターの真ん中に立ち、にこやかに話す店主の中村美穂さんは、とにかく日本酒、とりわけ燗酒が好きだという。世界中探しても熱燗やぬる燗など様々な温度帯で愉しめるお酒は日本酒のほかにはない。熱燗は料理に寄り添って、心地良く酔いながら体を温めてくれるし、ほっと心もほどけてリラックスできる……と、話しだすと日本酒賛が止まらないほどである。

「造り、焼、煮、揚、お酒のお供、〆め」とカテゴライズされた品書きは、料理名を見ているだけで、燗酒を欲する。天王寺蕪(てんのうじかぶら)の間引き菜とあさりのおひたしに合わせるのは、広島の竹鶴「秘傳(ひでん)」。潮風を感じさせる豊かな風味のあさり出汁に、広島の海の近くで醸されたどっしりとコシの強い燗酒がぴたりと寄り添う。
「日本酒の美味しさを単に甘・辛の数値で判断してほしくないんです。もっと日本酒の持つ深みや奥行き、強さや繊細さなど色々な魅力を料理との相性と共にどっぷり愉しんで」


北から南まで、中村さんが厳選した全国の地酒が常に約50種ほど揃う。料理を選んだら、酒のセレクトは中村さんに全権を委ねて、ゆるゆると酔いしれたい。


文◎郡 麻江 撮影◎尾上達也
燗の美穂(かんのみほ)

※店の営業時間が変更になることがありますので、来店時には店舗にご確認ください。