世界におけるワインの歴史は、紀元前8000年前のコーカサス山脈で始まったとされる。このワインはヨーロッパから世界へ広まり、そして15世紀には日本に伝えられた。現在、広く親しまれているワインの軌跡を辿っていく。
ワインはここから始まった

ワインは、紀元前8000年前頃から造られている醸造酒だ。ワイン発祥の地といわれているのはコーカサス山脈(現在のジョージア周辺)だが、酵母の働きを利用して、自生のブドウの糖分を分解してアルコールを造り出す方法で、すでにワインが完成していたとされる。
ワインが載っている最古の文献は紀元前5000年頃に書かれたメソポタミア文明の「ギルガメッシュ叙事詩」だ。
この文献によると、ギルガメッシュが大洪水に備えて船を造らせたときに、船大工たちに料理やワインをふるまったとの記述がある。また、この頃の遺跡からはワイン造り用と推測される道具が発見されていて、原材料となるブドウの畑があったこともわかっている。この頃から本格的にワインが造られ始めていたようだ。
紀元前4000年頃からは、エジプトの壁画に壺やブドウを絞る道具やワインを造る様子が描かれ、記録には高級品として扱っていたと残っている。その後、紀元前3000年頃に現在のレバノンを拠点とするフェニキア人があちこちにワインを広め、紀元前2000年頃には醸造技術がギリシャに伝わる。のちにこの技術はローマに渡り、シーザーが率いるローマ人によってフランスなどヨーロッパ全土に伝わった。
キリスト教とワイン

中世のヨーロッパでは、人々の生活にキリスト教の教えが浸透していた。キリスト教では「罪の許しのためにキリストの血が流される」と考えられ、ワインは「キリストの血」としてミサで利用されるようになった。教えのなかで、キリストの血として神聖で重要なものとして扱われていたワインは、キリスト教とともにヨーロッパや全世界に広がり、多くの人から愛されるようになっていく。
実際、中世では、教会や修道院が街の中心部に存在し、食文化と芸術の保護を担っていた。修道士たちは、修道院でキリスト教に捧げる供物を研究し、この頃、ワイン造りや原料となるブドウ畑の開墾が積極的に行われるようになる。この時代に、ワイン文化は急速に進歩していった。

16世紀には世界に広まり、ワインは華やかな宮廷文化にも欠かせないものとなった。また、当時の王侯貴族も競ってワインの研究を進めさせ、次々と上質な銘柄が生まれ、17世紀頃にはワインの保存方法が瓶詰めに変わるなどの変化も起きている。
日本のワイン史
日本の歴史に初めてワインが登場するのは、1549年にフランシスコ・ザビエルが種子島に来航したときだ。布教のために日本に訪れたザビエルが、日本に持ち込んだといわれている。そして、江戸時代が終わり明治時代になると日本の近代化が進み、それまでは行われていなかったワイン醸造が政府からも推奨されるようになる。明治3年には、国内で初めて国産ワインを造った「ぶどう酒共同醸造所」が設立された。
さらに東京オリンピック頃からワイン消費が増加したことを背景に、酒造メーカーがブドウの品種改良や技術開発を行い、現在では「甲州」や「マスカット・ベリーA」などの品種による国産ワインが高い評価を得ている。