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天守のある本壇以外にも見どころ満載の城歩き
小説『坊ちゃん』のマドンナ姿のスタッフに導かれて城へのロープウェイに乗り込み、緑豊かな風景を眺める。見どころを紹介するアナウンスが「だんだん(ありがとう)」と伊予弁で結ばれ、ロープウェイは長者ヶ平に到着した。
「おもてなし」を大切にする松山らしい演出に感心しながら、案内人の松山城総合事務所学芸員・尾上友美さんに導かれて登城道を歩く。
前方には太鼓櫓と、美しい弧を描く高石垣がそびえる。その先には目指す天守も輝いている。ただし、そのまま直進しても天守にはたどり着けない。登城するには太鼓櫓下を180度U字に折り返さなければならないのだ。
出だしから巧妙な仕掛けに翻弄されたが、これはまだ序の口。U字に折り返して坂道を上ると戸無門が現れ、くぐり抜けると左手に本丸最大の筒井門が。「ここを通るのか」と門を眺める。

すると「奥に隠門があります。見てみましょう」と尾上さん。筒井門右奥の石垣の陰には、筒井門前からは見えなかった櫓門が。筒井門に迫る相手を、ここから急襲するのだという。
筒井門を突破しても、今度は正面に太鼓櫓、太鼓門、巽櫓と20m以上も続く防衛線があり、狭間や石落が待ち受ける。太鼓門を抜ければ本丸の広場だが、容易に行けそうにない。

侵入者を待つ数々の仕掛けに、冒頭から危機一髪のアクション映画を観た気分に。「すごいですね……」と呟くと、尾上さんは笑顔でこちらを見た。その目は「まだ序章ですよ」と告げていた。
この難攻不落の城を築いたのは「賤ケ岳七本槍」の一人、闘将・加藤嘉明。彼は豊臣秀吉に仕えた後、関ヶ原の戦いで石田三成を嫌って徳川方に従軍。
その戦功を認められ、伊予半国20万石に封ぜられた。初代松山藩主となった彼の手により、慶長7年(1602)、松山城の築城が始まった。
ところが四半世紀もの間、築城に情熱を注いだ嘉明は、完成目前に会津へと転封された。その後しばらく、蒲生氏郷の孫・忠知が治めた後、松平定行が15万石で入封となり、以後、松平氏の居城となっている。
その間、度重なる改築や再建が行われたが、最大の危機は天明4年(1784)の火災。落雷によって天守など本壇の建物すべてが炎上した。復興が始まったのは36年後の文政3年(1820)で、安政元年(1854)に落成式を行っている。
30年以上の歳月をかけた再建は異例の大事業だったが、将軍家ゆかりの松平氏だからこそ可能だった。
いよいよその本壇へ、と思いきや尾上さんは左手の紫竹門へ。これも重要文化財という。その奥にある紫竹門西塀も重要文化財。

重要文化財の紫竹門西塀。狭間の向きが途中で反対に。どの方向からも攻撃できるようになっている。
北へ向いている狭間が、途中から南へ向きを変えている。どちらから攻め込まれても対応できるようにするためだという。
続いて、風格ある乾櫓や野原櫓を見る。この2つも重要文化財。野原櫓は日本で唯一、現存する望楼型二重櫓で、天守の原型と言われている。本壇を右手に眺めながら進んでいくと艮門と艮門東続櫓が。

「ここでテレビドラマ『坂の上の雲』のポスターが撮られたんですよ」と尾上さん。ほかにも江戸時代後期に積み直した石垣の違いや、天守の破風などについて解説を受けながら、ようやく本壇入口の一ノ門にたどり着いた。

あまりの見どころの多さに、すでに頭の中は一杯だ。城内にある重要文化財は21棟、復興建造物は30棟というのだから無理もない。
「ひととおり解説できるようになるには、どのくらいかかるんですか」と尋ねると「1年はかかりましたね」と尾上さん。まさに巨大な迷宮だ。
その中心、本壇へといよいよ進む。一ノ門をくぐると90度左へ曲がり、続いて二ノ門を通ったら、今度は180度、向きを変えて三ノ門へ。方向感覚がおかしくなる。しかもその間、周囲を櫓や塀で囲まれ、無数の狭間がこちらを向いている。

侵入者は、細く入り組んだ路地を進みながら「狙われている」という緊張感をずっと強いられるのだから大変だ。最後に筋鉄門をくぐり、遂に連立天守の中庭に到着した。
三重三階・地下一階の層塔型天守の内部は、戦時への備えと同時に太平の世の天守らしさも垣間見えた。無数の狭間が備わっているが、畳が敷けるし、床の間もしつらえられている。
左/天守最上階の3 階。 他の階と同じく天井板があり、畳も敷けるほか、ふすまが建てつけられる鴨 居と敷居や床の間もある。右/天守 2階の内部 。天守としては珍しく天井板があり畳も敷ける。
最上階からは、広々とした松山平野が一望できた。遠くに瀬戸内海が蒼く輝いている。窓からそよぐ風を感じながら「また来よう」と心に誓う。この巨大迷宮は一度では味わい尽くせない。再訪してもっと堪能しようと心に決めた。


まつやまじょう
愛媛県松山市丸之内
TEL:089-921-4873(松山城総合事務所)
開城時間:天守9:00〜17:00(8月は17:30、12月~1月は16:30まで。入城は閉城の30分前) 休館日:12月第3水曜 入場料:520円(天守)
アクセス:JR「松山駅」より伊予鉄道「大街道電停」下車、徒歩約5分
※開城時間等についてはHP等で要確認。
文◎浅川俊文 撮影◎池本史彦
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