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WHO IS BANKSY? バンクシーって誰?展
覆面匿名のアーティスト、バンクシーの世界

(c)Alamy
顔を伏せ、匿名でゲリラ的なアート活動を続けるバンクシーはイギリス・ブリストル出身のストリート・アーティスト。ビルや公共施設の壁などに無許可で作品を残すほか、大英博物館やルーブル美術館といった名だたる美術館に勝手に作品を展示したこともある。
路上に残された作品の多くは上書きされたり剥ぎ取られたりしてほとんど残っていないが、公共の場で発表されるこれらの作品がもつ強烈なメッセージ性は、人々の記憶に深く刻み付けられる。そこに表現されているのは、大量消費、戦争、ネットワーク上で常に人々を管理する社会や政治に対する強い反抗の意思だ。

Photographed by James Pfaff
2003年 18.7×25.4cm 個人蔵
バンクシーの公式作品集『Wall and Piece』にも掲載されたバンクシー本人のポートレート写真。現在は、イギリスのナショナル・ポートレート・ギャラリーに正式に所蔵されている。チンパンジーのマスクは、初期にバンクシーのアイコンとして使用されていたもの。バンクシーの初監督作品『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』にも登場する。
本展では世界を巡回し人気を博した「ジ・アート・オブ・バンクシー展」に出展された個人コレクターの額装作品を中心に、イギリスやアメリカ、中東の街角を場内に再現。全面撮影可能な体感型没入空間が誕生、バンクシー作品を存分に楽しめる内容となっている。

絶対に見ておきたい注目の2作品
《Girl with TV》(テレビと少女)

スプレーペイント/鉄板 2003年 160×88cm 個人蔵
アルバム『シンクタンク』のジャケットにバンクシー作品を起用し、成功したブラー。2003年、雑誌の表紙用に背景デザインを再び依頼する。本作はその時に制作した3作品のうちのひとつ。最終的に窓ガラスを突き破ってテレビのモニターが投げ捨てられる様子を描いた、別のモチーフが採用となった。
本展で注目の作品のひとつは、イギリスのロックバンド・ブラーの掲載雑誌の表紙背景用に描いたものの、採用には至らなかった一枚。バンクシーを愛好するアーティストはジャンルを超え多岐にわたる。ブラーも早くからアルバムジャケットにバンクシー作品を起用してきた。
《Congestion Charge》(コンジェスチョン・チャージ(混雑税))

油彩/カンヴァス 2004年 69×79cm ポール・スミス蔵 (c)
既存の作品に描き足すことで意味を変えてしまう「デトーナメント(転用)」を用いたシリーズのひとつ。蚤の市で安値で売られていた無名の画家の風景作品に、交通標識を描き加えたもの。「C」の標識はロンドン市内への車の乗り入れを料金の徴収によって制限する「コンジェスチョン・チャージ」の対象となる区域を示している。
もうひとつはファッションデザイナーのポール・スミスが所蔵する作品。無名画家の風景画に、ロンドン市内への車の乗り入れを料金徴収により制限する「コンジェスチョン・チャージ」の標識を描き加えたもの。既存作品に何かを書き足し、意味を変える手法はバンクシーが得意とする表現方法のひとつでもある。
Banksy’s Collector|fashion designer Paul Smith(ポール・スミス)
1946年生まれ、イギリスのファッションデザイナー。1970年にポール・スミスを設立、現在世界70カ国以上に店舗を展開する。2000年、エリザベス女王からナイトに叙勲される。
舞台美術の技を駆使したストリートアートをリアルに再現
世界各地のストリートを舞台美術の技術で再現!
ストリート・アーティストにとって作品を発表する場所は重要な意味をもつ。路上であればどこでも良い訳ではなく、表現するメッセージに応じた場所が選ばれる。世界各地に分散するバンクシーのストリートアート作品も同様で、作品と場所の関係を理解して初めて、その意図が理解できるといえるだろう。
本展ではテレビスタジオの舞台美術チームがリアルサイズで再現。バンクシーの故郷・ブリストルや活動拠点のロンドン、ストリートアート発祥の地ニューヨーク、何度も訪れて作品を残し続けているパレスチナの街並みを、東京にいながら追体験できるという新たな試みだ。
パレスチナで描かれた子猫

2014年のイスラエル軍の空爆によって、被害を受けたガザ地区で、破壊された家屋の壁に描かれた巨大な子猫。糸のように絡まった金属のボールが置かれ、まるで子猫がボールで遊んでいるようにみえる。バンクシーは自身のウェブサイトに写真を投稿、「ガザでの破壊行為にスポットを当てたかったが、人は子猫の絵ばかりを見ている」とコメントしている。
▶バンクシーが実際にガザ地区に描いた「子猫《Giant Kitten》」
英・チェルトナムの電話ボックス

トレンチコートに身を包んだを3人の男が電話ボックスの外側で会話を盗聴している様子が描かれている。イギリスの通信傍受機関GCHQからわずか数マイル離れたところに描かれた本作には、2009年にロンドンで開催された首脳会議などで各国高官の電話やメールを傍受していたGCHQに対するバンクシーの批判が込められていると考えられる。
バンクシーを象徴するネズミ
バンクシーの分身であり我々の分身であるネズミ

スプレーペイント/カンヴァス 2004年 78×61cm 個人蔵
2000年頃からロンドンに拠点を移し、街中に大量のネズミを描き始めたバンクシー。フランスのステンシル画の父、ブレック・ル・ラットに影響を受けたとされるが、バンクシーの描くネズミはより擬人化されている。
バンクシーが活動初期から現在まで、自身の署名または自画像のように描き続けるモチーフがドブネズミだ。都市に寄生して生き抜く厄介者は、社会的弱者の象徴でもある。かつて動物園に忍び込み、動物からのメッセージを表現したが、バンクシーはこれについて「自分たちのことを表現する手段がない生き物のためにやってるんだ」と述べている。

シルクスクリーン/紙 2004年 49.3×34.4cm 個人蔵
壁に鮮やかな赤いハートの輪郭を描いたネズミが描かれ、愛を訴えている。「ラブ・ラット」はリヴァプールの路上に最初に登場し、2004年に150枚の署名入りプリントと600枚の署名なしプリントが制作された。
ストリートアートの原点である街中にタグ(ライターの名前)を描く行為も、社会的弱者がその存在を表明する手段。「もし君が誰からも愛されず、汚くて、取るに足らない人間だとしたら、ラットは究極のお手本だ」と語るバンクシー。本展でもバンクシーの分身である様々なネズミたちに出合うことができる。
東京で見つかったバンクシー?のネズミ
2019年1月、小池百合子東京都知事がバンクシーが描いた可能性のある1枚の絵をツイッターに投稿。その絵とは、傘を差し旅行鞄のようなものを携えた1匹のネズミ。バンクシーがこれまで何度も取り上げてきたモチーフが東京にやってきたと、大騒ぎになった。
この絵は現在、日の出ふ頭の2号船客待合所(シンフォニー乗り場)にて展示されている。誰でも無料で観ることができるため、バンクシー展に合わせて立ち寄るのもいいだろう。バンクシーがネズミの絵に込める意味について、以下の記事でさらに詳しく解説している。ぜひあわせて読んでみてほしい。
バンクシーの世界観を象徴するもうひとつの作品

スプレーペイント、アクリル/カンヴァス 2006年 91×91cm 個人蔵
圧倒的な武力に対して投石やゴムパチンコで抗議した運動をモチーフに、男性の手に石の代わりに花束を持たせている。バンクシーの作家としての思想や活動家としての姿勢を象徴する代表作。
▶ベツレヘムの街の壁に描かれた《Flower Thrower(フラワー・スロワー)》
オークションで話題になった「風船と少女」
常に世界の注目の的!? 世界を騒がせた作品とは
アートの在り方そのものに疑問を呈し、これまで数々のゲリラ的な展示で世界を驚愕させてきたバンクシー。シュレッダー事件もそのひとつで、美術界の権威主義・商業主義を標的として行われた。この事件後、バンクシーは細断された代表作《風船と少女》に《愛はゴミ箱の中へ》という新たなタイトルを付与し、作品はここでようやく完成に至る。

スプレーペイント、アクリル/カンヴァス 2006年 各30×30cm 個人蔵
2018年、イギリスのサザビーズで1億5000万円で落札された後、バンクシー本人が仕込んでいたシュレッダーによって作品が細断された“シュレッダー事件”で広く知られるようになったバンクシーの代表作。

オフセット・リトグラフ(ポスター) 2009年 53×84cm 個人蔵
かつて民主主義のモデルと呼ばれたイギリス議会の凋落を描く。本作は2009年、ブリストルで開催された「Banksy VS Bristol Museum」展のため制作された油絵のポスター版。
《モンキー・パーラメント》は2009年にブリストルでの展覧会用に描かれた油絵のポスター版。オリジナルはブレグジットで議会が紛糾する2019年という絶妙なタイミングでオークションにかけられ、約13億円というバンクシー作品では最も高額な落札額を記録した。世界を騒がせたあの作品と同じモチーフの作品が本展にも登場、この機会にじっくり鑑賞したい。
▶約13億円で落札された《Devolved Parliament》(英国の地方議会)
バンクシー作品に込められた社会への批判
現代社会を象徴するバンクシーのメッセージ

シルクスクリーン/紙 2007年 57.3×76.8cm 個人蔵
「セール最終日」を告げる看板の下に、ルネサンス絵画風に嘆き悲しむ女性たちを描いた本作は、まるで宗教と化したような資本主義社会と消費文化を風刺している。本作はバンクシー本人のサイン入りシルクスクリーンである。
バンクシー作品に込められるメッセージは様々だ。テート・ブリテンで作品をゲリラ展示した際には、その様子を捉えた監視カメラの画像を自著に掲載、読者を「監視カメラを監視する」地平へ連れ出した。

シルクスクリーン/紙 2005年 49.4×35.2cm 個人蔵
イギリスの大手スーパーマーケット「テスコ」のオリジナルブランドのスープ缶。ウォーホルが1962年に描いたキャンベルのスープ缶の現代版。バンクシーは地元経済を脅かす大企業への痛烈な批判を本作に込めた。
ウォーホルの「キャンベル・スープ」を展示するMoMAでは、スープ缶を描いた自作を勝手に展示、美術館に飾ってあればアートだと思い込んで作品を眺める人々を注視する。
空き店舗を利用したインスタレーションでは、一見ペットショップのような空間にチキンナゲットが入った檻や豹を模した豹柄コートなど、人間に搾取される動物の姿を展示。
これらに共通するのは“力”に対する疑問と批判だ。そして、そのメッセージは見る者に人間の愚かしさを突きつける。本展でもバンクシー作品が鑑賞者に問うことだろう。「あなたもこの愚かな社会に加担しているのではないだろうか」と。

シルクスクリーン/紙 2008年 75.5×50cm 個人蔵
原画は2005年ハリケーンによる大洪水で被害を受けたニューオリンズに描かれたもの。本来、雨から身を守ってくれるはずの傘の内側が土砂降りになっている本作は、犠牲者を追悼するとともに、国や州の不十分な災害対策を批判している。

シルクスクリーン/紙 2004年 29.6×20.9cm 個人蔵
2003年にロンドンで開催された「イラク戦争反対デモ」で参加者にステンシル画のプラカードが配られた。本作はそのステンシルを用いた限定版プリント。「間違った戦争」とあり、イラク侵攻への批判をストレートに表現している。

スプレーペイント/カンヴァス 2002年 43×43cm 個人蔵
ポニーテールの少女が軍用機用の爆弾を抱きしめている。もともとは2003年にロンドン東部の壁に描かれたもので、本作はステンシル画。戦争を行う国の幼稚さと、「戦争」と「愛」という二項対立をも表現している。

シルクスクリーン/紙 2002年 56.8×42.1cm 個人蔵
中指を突き立てて威嚇する警官はバンクシー初期の作品。元マネージャーのスティーブ・ラザリデスと共同制作された最初のシルクスクリーンによるプリント。白黒のステンシルで中指が効果的に表現されている。

スプレーペイント/カンヴァス 2003年 32×28cm 個人蔵
2000年代初頭にロンドンの街中や地下鉄にバンクシーがよく描いていたシリーズ。看板を胸に下げて立つチンパンジーは「自分以外の誰かのふりをした偽物になるなよ」という警告を発している。

シルクスクリーン/紙 2007年 76.5×57.3cm 個人蔵
ロンドン警視庁の80年代当時の制服を着た警官が、『オズの魔法使い』の主人公・ドロシーに職務質問し、荷物検査を行なっている。本作では無邪気の象徴のような少女ドロシーでも容赦なく検査を行う不条理が描かれている。
もうひとつの展覧会「バンクシー展 天才か反逆者か」
一足先に日本で開催されている展覧会が、横浜・大阪・名古屋・福岡の4都市を巡る「バンクシー展 天才か反逆者か」だ。オリジナルや版画、立体オブジェクトなど70点以上の貴重な作品を展示するほか、大型3面スクリーンを使用した体験型展示も実施。また、様々な写真・映像資料を元に再現された制作スタジオの展示や、テーマパーク「ディズマランド」の映像インスタレーション、「ウォールド・オフ・ホテル」の一室の再現も見逃せない。
「バンクシー展 天才か反逆者か」の見どころや詳細について、以下の記事で詳しく紹介している。「バンクシーって誰?展」開催前に、予習も兼ねて訪れてみてはいかがだろうか。
文◎奥 紀栄(本文)
WHO IS BANKSY? バンクシーって誰?展
※新型コロナウイルスの影響により開催延期となりました。変更後の会期は展覧会公式サイトでご確認ください。
https://whoisbanksy.jp/
[東京]2021年8 月21日(土)~12月5 日(日) 寺田倉庫 G1ビル
[名古屋]2021年12月19日(日)~2022年3月27日(日) ※会場調整中
[大阪]2022年4月23日(土)~6月12日(日) グランフロント大阪 北館 ナレッジキャピタル イベントラボ
[郡山]2022年6月29日(水)~8月24日(水) ビッグパレットふくしま
※開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は展覧会公式HPなどでご確認ください。
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