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数年前から注目され始め、世界的にも人気のオレンジワイン。白ワイン、赤ワイン、ロゼワインに次ぐ第4のジャンルとして確立され初めている。一体、どんな楽しみ方ができるのだろうか。いち早く日本でオレンジワインに注目したソムリエの岩井穂純さんに、その魅力とおすすめワインを聞いた。
第4のワイン「オレンジワイン」とは?

オレンジワインの醸造方法
ワインの醸造は、「発酵→熟成」の2段階にわけられる。白ワインは、白ブドウの果汁のみ発酵させたもの。逆に、赤ワインは黒ブドウの果皮も種も一緒に漬け込んで発酵させたもの。ではオレンジワインは、どのように造られているのだろう?
「オレンジワインは、白ワインと同じように白ブドウを使いますが、果汁だけでなく、果皮も種も一緒に漬け込んで発酵させるのがポイントです。それにより、色合いが濃くなり、果皮や種からもフレーバーが出て、タンニンの渋みの要素が加わってきます」(岩井さん、以下同)
オレンジワインの色合いは、黄色っぽいものから琥珀色までさまざま。この色合いやボリューム感は、発酵段階の果皮や種を漬け込む期間や温度が決め手になる。漬け込む期間は数日から半年以上まで、産地の伝統や気候に合わせて変わってくる。漬け込む期間が長ければ、抽出される色素や成分が豊かになり、濃くボリューム感のあるワインとなる。
発酵温度の違いは、発酵容器など発酵するときの環境によって異なる。ステンレスで発酵すれば温度が低くなり、樽で発酵すれば温度は高いのが一般的。さらには、アンフォラまたはクヴェヴリといわれる陶器(甕や壺)で発酵させる方法もある。これも通常どおりの管理なら発酵温度は高くなるが、ジョージアのカヘティ地方では伝統的にクヴェヴリを地中に埋める方法を採用している。こうすると発酵温度は低く保たれ、ゆっくりと発酵する。実際に6ヶ月以上の発酵期間が取られている。こうした発酵や熟成方法や期間、ブドウの品種の違いなどがオレンジワインのフレーバーやボリューム感の個性となって表れる。
オレンジワインの発端はイタリア北東部。自然派がムーブメントを後押し

ジョージアのクヴェヴリという発酵に使う甕。テラコッタでできている。ワイナリーで土中に埋められて発酵される。
現在のオレンジワインのムーブメントの発端は、1990年代末頃にさかのぼる。イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州でヨスコ・グラヴナーが昔ながらの醸造に立ち返ろうと白ワインを果皮や種ごと仕込み、アンフォラを地中に埋めてワインを醸造。時期を同じくして、同じ地域のスタニスラオ・ラディコンもこうしたワインの醸造を模索。フリウリでオレンジ色をしたワインが造られるようになった。
「当時もすでにオレンジ色をしたワインはできあがっていましたが、まだ白ワインという認識でした。転機となったのは、2004年にワイン商デイヴィッド・ハーベイが “オレンジワイン”と呼んだこと。明確でわかりやすい名前をつけたことが、エポックメイキングとなりました」
そしてイギリス人ワインジャーナリストのサイモン・J・ウルフ氏がこの流れに注目。彼がオレンジワインの名を広めたことで、生産地もイタリア各地やアメリカなどに拡大。オレンジワインの生産は世界に広がっていった。
日本でも2004年頃から甲州種の試行錯誤の1つとしてオレンジワインが造られ始めた。2011年から2014年頃にソムリエやジャーナリストなどプロが注目。3、4年前からワイン愛好家にも飲まれるようになり、現在に至っている。
オレンジワインが注目されたのは、世界的に自然なワイン造りが求められていたことが大きい。果皮や種ごと漬けることで、酵母を添加しなくても発酵が可能に。さらには酸化防止剤の役割を果たし、亜硫酸塩の添加を抑えることができる。実は、ワイン発祥の地とされるジョージアでは元々この方法でワインが醸造されていた。そのため、原点回帰としてジョージアのアンバーワインも脚光を浴び、衰退しかかっていたクヴェヴリによる醸造も復興を果たしている。つまり、オレンジワインのはるか源流は世界最古のワイン。古くて新しい温故知新のワインスタイルといえる。
オレンジワインの味わいと楽しみ方
熟した柑橘の風味?! オレンジワインの味わいとは?
オレンジワインは、フレッシュでクリーンな白ワインよりもまろやかで渋みもプラスされた個性が表れる。
「香りには、果皮の成分が抽出され、枇杷やアンズ、柿などの黄色い果物のニュアンスが出ます。さらに皮ごとブドウを食べたときのようなビターさが出て、食事をより引き立ててくれるのです。漬け込み期間の長いものは、果皮からのタンニンや種からのえぐみが複雑な旨味になって、グリルやスモークした料理と相性が良くなります」
オレンジワインの風味は、淡い色のものほど白ワインに近く、琥珀色のものほど赤ワインに近くなり、色の濃さに比例する。ただし、赤ワインに近いといっても、いちごやブルーベリーというより、熟した柑橘系や紅茶の雰囲気。ゆったりと包み込むような味わいとなるのが特徴だ。
和食や魚卵にも合う! オレンジワインの楽しみ方

一般に魚料理には白ワイン、肉料理には赤ワインが合うとされている。その中間的な立ち位置のオレンジワインは、どんな合わせ方をしたら良いのだろう?
「オレンジワインは。白ワインでも赤ワインでもピンとこなかったような食材と相性がいいですね。例えば、豚肉やきのこ類、漬物などがそれに当たります。調理法でいえば、焼いたものやスモークしたものとの相性は非常にいいですね。また、柑橘の風味があることで、和食やアジアの料理ともマッチする。合わせる幅が広いワインだと言えます」
なぜ、きのこ類と相性がいいかというと、シイタケに柑橘類のカボスを搾るとおいしくなる理屈と同じ。グリルやスモーク料理と相性がいいのは、種が溶け出したことによりオレンジワインに木質成分があるため。料理とワインのペアリングは、ワインの風味が調味料やソースの役割をして相乗効果があるかどうか、共通する成分があるかどうかがカギになる。
意外なところでは絶対に合わないとされてきた“ワインキラー・魚卵”もオレンジワインの守備範囲だと言う。
「オレンジワインは、数の子やいくら、キャビアなどあらゆる魚卵に合いますし、ウニや生牡蠣とも好相性。皮由来のカテキン成分が含まれていることが臭み消しの役割を果たしています。それが魚介の生臭さを感じさせず、マスキングして包み込むようなマリアージュにしているのだと思います」
もちろん、単品で飲んでも味わい深いのがオレンジワイン。日常の食卓や晩酌に気軽に取り入れられるワインといえよう。
ソムリエ岩井さんおすすめ! タイプ別オレンジワイン4選
実際にオレンジワインには、どんなタイプがおすすめなのだろう。生産地やタイプの違うオレンジワインと味わい方を教えてもらった。
気品ある女王のような孤高のワイン【スケルリ ヴィトフスカ2017】

1本目に選んでもらったのが、オレンジワイン発端の地、イタリアはフリウリのワイン。ヴィトフスカは、フリウリの地場品種の1つなのだそう。
「フリウリでは、リボッラジャッラという品種が有名ですが、フリウリらしい個性を持つのがこのヴィトフスカ。強風が吹き、石灰質が露出しているような不毛の地で育ったブドウを使っています。
味わいは過酷な環境を感じさせない、女王のような華やかなワイン。柑橘のような香りがあって、気品があってエレガント。オレンジワインの中ではミネラル感が強いタイプなので、生魚にも合います。後味には塩味のようなミネラルがじわっときて余韻も長い。なのにボリューム感は大きくなりすぎず、引き締まっている。温度が上がってきても凛とした個性のあるワインです」
ミネラル感のあるワインは魚介に合うセオリーがある。日本人が最初に飲むオレンジワインとしてもいいだろう。
香りの芳しさに溺れたい【クアルティチェッロ レモーレ2020】

次に紹介されたのは、イタリアの中部エミリア=ロマーニャ州のオレンジワイン。マルヴァジア・ディ・カンディア・アロマティカというアロマティック品種で造られたもの。
「なんといっても香りがゴージャス。ジャスミンやバラ、ユリ、ラベンダーなど花の香りが強く、鼻を近づけると、うっとりします。これだけ芳しいオレンジワインがあるという発見に繋がるでしょう。とはいえオレンジワインなので、飲んでみると、桃やアンズのようなまろやかさがある。タンニンがあることで、紅茶のように全体を引き締めてくれるので、甘ったるくなりません。
おすすめのペアリングは、生牡蠣やウニ、魚卵。ローズマリーや生姜で味付けした豚肉にも好相性です」
リースリングやヴィオニエ、ゲヴェルツ・トラミネールなど、白ワインのアロマティック品種が苦手な人にも挑戦してみてほしいオレンジワインだ。
いつものシャルドネがオレンジワインになると…? 【ヴィッキー ジュラシック2018 】

次は、白ワインでおなじみのシャルドネで造られたオレンジワイン。フランス・ジュラ地方のもの。
「シャルドネは皆さん、ご存じだと思うので、それをオレンジワインにするとどうなるかがわかる1本です。シャルドネは白ワインだと、あまり個性を感じられない品種。でも、実は皮に独自の味わいがあって、柿や枇杷のような香りが出てきます。
いつも飲んでいるシャルドネがこうなるんだという発見があると思います。渋みもまろやかなので、どんな人にも楽しんでいただけるオレンジワインです」
シャルドネの個性をオレンジワインで追求してみてもおもしろい。
世界最古のジョージアワイン 【チョティアシュビリ ヒフヴィ2016】

最後に登場するのは、ジョージアのオレンジワイン。漬け込み期間が長いため、琥珀色をしているのが特徴。現地ではアンバーワインと呼ばれている。
「ジョージアのワインは6ヶ月漬け込んでいるので、ボディがしっかりしていてリッチ。フルボディのワインが好きな人におすすめです。このヒフヴィという品種は、華やかな香りと桃のようなまろやかさがあります。
ジョージアのワインは漬け込んでいる期間が長い分、個性も強くなりがちですが、こちらの造り手のワインはきれいに発酵させていて、味わいがクリア。渋みやスモーキーなニュアンスが奥の方に感じられ、種まで余すことなくエキスを出しきっています。ジョージアのオレンジワインデビューしたい人は、こちらからどうぞ」
世界最古から続くワインの味わいをぜひ感じてみてほしい。

取材協力:岩井穂純
日本ソムリエ協会認定ソムリエ、AWMB認定オーストリアワイン大使/都内のワインバーやレストラン勤務を経て、2016年にワインショップ&バー「酒美土場」をオープン。ワインスクールで講師も務める。2011年頃からオレンジワインを飲み始め、オレンジワインのペアリングを研究し、“アンフォラおじさん”として活躍中。『ソムリエ×料理人が家飲み用に本気で考えたおうちペアリング』では著者の1人として執筆。
取材・文 岡本のぞみ(verb)、撮影 片桐圭
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